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川瀬巴水 旅情詩人と呼ばれた版画絵師 ―没後50年― 展 [展覧会@川瀬巴水]

 「川瀬巴水 旅情詩人と呼ばれた版画絵師 ―没後50年―」展
http://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/manabu/hakubutsukan/tokubetsu/kyoudohakubutsukan_tokubetuten/index.html
 
2007年10月21日(日)~12月2日(日)
 
  前期: 10月21日(日)~11月11日(日)
   後期: 11月13日(火)~12月2日(日)
 大田区立郷土博物館 @東京都
 


チラシ↓
   

 図録↓

 展覧会図録は、厚さ1cm弱というコンパクトさで1000円とお手頃価格。
 この中に300点分つまってるので、1つ1つの図版は小さかったりするけれど、
 制作過程を順に追ったものや下絵など、比較して観たい作品がかなり多いので、
 むしろそれが有難かったり。お買い得の一品。


ポスター↓
    
ポスターを3種も作るなんて、気合の程が窺える。


大田区立郷土博物館↓
  
こじんまりとした建物。
都営地下鉄浅草線の西馬込駅から徒歩7分、
もしくはJR京浜東北線の大森駅からバス、と、
交通はやや不便だけど、なんと鑑賞料が無料という太っ腹な施設。


川瀬巴水(かわせはすい)を知ったのは、確か東博の常設展。
普段は知らない画家の作品は流す程度なのに
思わず足を止めたのだけど、ろくに名前を覚えられず。
が、
とらさんのブログにて再会。感謝。



↓ 『渡邊版 「墅火止平林寺」 木版畫順序摺』
まず制作過程を追うことの出来る作品をご紹介。

  →    →   ↓

  →    →   ↓ 

      

 
他の展覧会でも、色を重ねる過程の展示を観たことはあるのだけど、
この重ね方というのが、なんともまた深い。
シンプルに一色で一面を塗りつぶす感じで始まって、
なんとも繊細な色の微調整を重ねていく様は、
こういう重ね方をするのか、と見入るばかり。 
 


↓ 「冬の月 (戸山ヶ原)」

  
勿論、こういう、浮世絵ならではの藍というか
蒼の美しさを活かした作品はお手の物。


↓ 『美術社版 『浮世絵紋様集』 「新日本八景」土佐室戸崎』
 
なんとも微妙な色加減とフラットに力強い(ってどんな表現だ)
質感が印象深い。



↓「大森海岸 『東京二十景』」

こちらは地元の何気ない風景に、青の色味が沁みる。

 ↓ 「冨士の雪晴 (田子の浦)」
  
なんとももったりした雪の質感。
こういう構図は数あれど、この色合いと質感って珍しいのではないかと。
(と、ろくに知らないのだけど、そう思ってしまったりする。)



↓美術社版 『浮世絵紋様集』 「新日本八景」 肥前雲仙嶽

上の「冨士の雪晴」もだけど、
夕焼け(朝焼け)の茜色の色調の表現が絶品。
こういう独特の色遣いが堪らない。素晴らしいの一語に尽きる。



↓  「朝鮮智異山泉隠寺」 『続朝鮮風景』

そしてこの光の捉え方。
光の・・・と称される画家も多いけど、この陰影の表現ときたらもう、
なんと表現したらよいか、息を呑むばかり。


↓ 「森ヶ崎乃夕陽」 版下絵
   
左が版下絵の水彩画で、右が版画なんだけど、
水彩画も一見版画と見間違う程。(自分だけか?)
巴水は、彫は彫師に、摺は摺師に任せたそうだけど、
下絵の時点で巴水独自の世界が既に成立しているのが興味深い。



↓  「森ヶ崎の雪晴之夕」

  
水彩画。画像だと伝わりにくいかもしれないけれど、
版画とは微妙に異なるふわっとした雪の質感がまた絶妙。

↓  「藤 (亀戸)」
 

「亀戸の藤」

上が版下絵の水彩画で、下がその構図を一部切り取った版画。
輪郭線無しで描いた藤棚の、満開の花の質感の表現がまたなんとも。

 ↓ 「五月雨 (荒川)」
  
どこか明るさの残る左の作品にはほとんど見られない雨の線が、
翳りを感じさせる右の作品には鮮明に残っていたり。
(画像ではわかり辛くて恐縮です。)
同じ作品でも、摺の版が異なると印象も変わるのがまた興味深い例。


↓ 「暮るゝ雪 (江戸川)」

  
カラー写真とモノクロ写真ではないけれど、カラーと藍一色の2バージョン。
随分と味わいも変わってくるけど、青のみで表現する感性には感心するばかり。
 

↓  「夜之池畔 (不忍池)」
    ←部分
ちょっと現代っぽいこの夜景は、時代を感じさせる。
左端には版元の“ドイ”の文字が見えるあたり、
スポンサーへの配慮が垣間見えて、なんだか微笑ましい様でもあり。

・・・と、思うままに作品を並べては観たけれど、
実際の会場では、丁寧な解説文と共に、
巴水の人となりと画業の変遷を追うことが出来る構成になっている。
摺りの過程の展示や、版画の隣に版下絵が並べられているなどの配慮に加えて、
『巴水団扇絵十二景』の展示で、シリーズものの団扇十二全てが、
これを後年焼きなおした『川瀬巴水 名所十二景』と共にされていたのが嬉しい限り。
シリーズものの展示だと、数点を抜粋したりすることも多い中、
全作品を、しかも団扇と版画の微妙な摺の違いを見比べながら鑑賞出来るのには感激。

1つだけちょびっと辛かったのは、作品の展示位置が低くて、
じっくり観ようと思うと1作品毎にしゃがまねばならなかったこと。
(でも子供や車椅子の方にはこの位の高さの方が見やすいのだろうか?)


今週末で終わりだけれど、1人でも多くの方に観て頂きたい展覧会。
まさに秀逸な企画だったと思う。前期を見逃したことを、激しく後悔している今日この頃。


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コメント 2

とら

コメントとTBありがとうございました。
記事が弾んでいますね。
《五月雨 (荒川)》は右は白雨、左は黒雨のようにも見えましたが、
図録でははっきりしないですね。
とにかく素晴らしい作品たちでした。
by とら (2007-11-28 08:57) 

m25

>とらさん
こちらこそ、コメントとTB有難うございました。

白雨、黒雨という表現があるのですね。
昔は全然浮世絵に興味がなく、
最近少しづつ楽しめる様になったばかりですので、
知りませんでした。

作品もですが、展示も凄くよかったです。
今回見逃した作品もまたどこかで観ることが出来ます様に、と
願うばかりです。
by m25 (2007-11-30 13:19) 

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